Bridge Executive Interview ~ 第7回 ~
営業力が導く企業の成長について
第7回目は、株式会社マクシスコンサルティング 代表取締役社長 坂井 賢二 氏にお話をお伺いしました。坂井氏はArthur Andersen Business Consulting にてパートナーとしてビジネスコンサルティング業界のリーダーとしてご活躍されており、KPMG Consulting 社との事業統合を経て、ベリングポイント株式会社ではマネージングディレクターに就任されました。その後伊藤忠テクノサイエンス社(現伊藤忠テクノソリューションズ)でビジネスコンサルティング本部長を経て、伊藤忠グループにおけるビジネスコンサルティングを含めた付加価値サービスの提供を推進するために2005年4月株式会社マクシスコンサルティングを設立され代表取締役に就任されています。
(※坂井氏のプロフィールはこちら)
―企業価値と営業力についてー
写真左_弊社代表吉田
「坂井様は以前からビジネスコンサルティングのフィールドにてご活躍されておりますが、企業の成長の原動力となる営業と関わりをもったのはどのような経緯からでしょうか。」
写真右_マクシスコンサルティング坂井社長
「私は以前コンサルタントとしてB2C(Business to Consumer)の流通小売関連会社のM&A案件でビジネスデューデリジェンスを担当していました。企業価値評価をするにあたり、企業が今後も成長力を維持できるかをアセスメントする際に企業の営業力について分析したのがきっかけです。その企業には現場の営業が動きづらいという課題がありました。営業組織に課題があったのですが、組織が機能ではなくチャネルで分担していたために、各組織の連携がなく、各組織が目標達成できたとしても期待する企業目標を達成するのは難しいという結論で、買収評価のプロセスにおいて、強化が望まれる領域としてポイントしました。」
吉田
「企業のデューデリジェンスにおいて、営業組織が今後も企業価値を高めるのかという視点で分析されたということですね。」
坂井氏
「ビジネス・デューデリジェンスを実施する際、営業力の評価は極めて重要です。例えば最近の案件ですが、とあるクライアントでは"高付加価値営業"を標榜された営業強化施策の展開を急いでいます。この"高付加価値営業"とは一人の営業に上述のような異なる複数の機能を持たせたいという本社側の戦略的な意図と言えます。営業組織は地域ごとに支社があり、支社の営業マンには売上目標の達成や本社企画の新規キャンペーンやプロモーションの推進を実施させているのですが、本社側の思いとは裏腹にいくら強化施策を企画、導入を考えても支社がまったく動きません。」
吉田
「本社の施策が地域支社の営業マンに浸透しないのはなぜでしょうか?」
坂井氏
「本社が狙っていることと地域支社の実態とかけ離れていることがあげられます。重要なポイントは、支社の営業マンへの業績評価制度でした。例えば、新規キャンペーンやプロモーションを支社の営業に実施させようとしても、彼らとしては既存商品/サービスの売上が評価対象です。本社が何を言おうが自分たちが評価されないものを売っている暇があれば評価対象の売上達成に活動するのは至極当然で、これは本社と支社でうまく血流が流れていない事例です。」
吉田
「企業の営業活動がうまく流れていない話として、本社と支社との関係は以前から大企業の課題として認識されているものと思いますが、この課題が未だに解決されないのはなぜでしょうか?」
坂井氏
「一言で言えば未だ"コーポレートガバナンス"が十分に機能していないということです。経済環境の変化に伴い外部環境が急速に変わっていますから、対応する各種施策を実施するためには、"資本"だけでなく"人本"も考えていかねばなりません。そのためには、新しい業務プロセスへの転換に加えて、業績評価制度、組織や権限も同時に変えていかなければなりませんが、既存の組織階層に変化に対する柔軟性が少ない場合には、組織や権限の適応に手間取り、結果として組織階層がビジネス環境の変化に取り残されてしまう根本原因となってしまいます。無理やり制度だけ作っても人は動きません。」
吉田
「企業においては、しがらみやらでがんじがらめとなっていて、変革の必要性に気づいたとしても組織構造上動きが鈍くならざるを得ない、ということでしょうか。」
坂井氏
「自分たちの組織の欠陥には気づいていると思います。しかしながら、売上が目標に達成していれば、当面の課題について気づかないふりをしているのではないでしょうか。売上数値が悪くなってはじめて組織や仕組みを変えようと思ったとしても、組織に柔軟性がない場合などは変革しようにも時間がかかり難しくなります。応急措置として外部から営業の責任者を採用したとしても、組織が現状のがんじがらめの状態を変えないのであれば疲弊していく一方です。このような場合に、私たちコンサルタントといった外部の力を活用して組織の根本的な見直しが必要になったりします。」
吉田
「なるほど。弊社のセールスBPOサービスは、営業マンが売上計上業務に集中できる仕組みを提供するために、それ以外の業務を外部に切り出すというアプローチなのですが、企業の営業業務をきちんと整理しないと切り出せませんし、整理しないまま切り出しても効果は薄いです。とはいえ、自分たちでは整理しきれないしリソースもないので外部の力を借りたいといって依頼されるお客様もいます。おっしゃるように、組織や階層を機能毎に分けていれば、営業機能のうちどこがボトルネックなのかみえてきますし組織や階層に柔軟性がありますから、機能を切り出すのも容易ですから外部利用も可能になりますね。」
―営業を取り巻く概況―
吉田
「景気回復局面において、今の日本の法人営業の現場では古い成功体験だけでは通用しなくなってきており、まさに変革点にいると感じています。坂井さんは現在の企業における営業への注目度はどのように考えられていますか?」
坂井氏
「ここ最近の国内企業の財務状況を見てみると"金余り"現象が見て取れます。内部留保分が大きく膨らんでおり、新製品開発や基礎研究の充実へ向けた設備投資も旺盛になってきています。それでも金余り状況が顕著となっていることを考えると、企業は何に投資して新たな収益源を創造すればよいか判らなくなっているのかも知れません。今後は企業が新たな収益を発掘するために営業力強化やバックオフィス業務の整流化に対して投資をしようという流れが顕著となってくるように思えますし、内部統制と言った法規制対応へ向けた施策としても外部委託化が進むものと想像しています。」
吉田
「営業力強化といっても、営業はコストであって投資するという考えはまだまだ少ないですね。」
坂井氏
「前述のコンサルティングに関わったクライアントで、営業現場の声として"売れる商品がない"という声を聞きました。このような営業現場に新規商品を出したから売ってこいといくらいっても無駄です。"売ることを考えてくれ"ということは、"売ることを考える仕組み"こそが必要なのです。企業の血流を良くするために売ることを考える仕組みの構築へ投資することこそ、企業がさらに成長する仕掛けになってくると思います。」
―今後の企業のトレンド―
吉田
「最後に、今までビジネスのトレンドとしてマネジメントの仕組みにも、SCMだったりCRMだったりと英語三文字で表記されるようなブームがありました。今後のビジネスのトレンドについてはどのように考えられていますか?」
坂井氏
「マーケットでは三角合併の解禁とともにますますM&Aが活発になるので、ポストマージインテグレーションがしばらく続くと思いますが、ここ1,2年は営業・マーケティング分野でのインテグレーションがますます脚光を浴びると思います。既に経理や人事、販売管理などアドミ系はさんざんやってきましたから、これからは"本業の再強化"すなわち営業力強化に注目が集まると考えています。企業合併において、人事や経理などは10+10=10のまま、つまり合併後に重複部分を効率化していくことを推進することになりますが、営業現場は10+10をいくつまで相乗効果として導くことができるか、が企業価値向上のためにも重要なファクターになってきます。変化に対応していくためにも営業組織の柔軟性は必須で、営業の機能を定義し会社をフレキシブルな体制に構築することが会社の血流を"整流化"していく、すなわち営業力向上につながると考えています。」
吉田
「企業価値向上には営業力の強化が必要で、そのためには組織に柔軟性を持たせることが重要なのですね。本日は貴重なお話を有難うございました。」
坂井 賢二 氏
Arthur Andersen Business Consulting にて Partner(共同経営責任者)。
KPMG Consulting 社との事業統合を経て、Bearing Point へ移籍。Managing Director。
2003年4月伊藤忠テクノサイエンス社(現伊藤忠テクノソリューションズ)へ入社、ビジネスコンサルティング本部本部長。
2005年4月マクシスコンサルティング設立。代表取締役に就任。