Bridge Executive Interview ~ 第8回 ~
「顧客満足」を超える
エグゼクティブインタビュー第8回目は、株式会社愛媛銀行 お客様サービス部 部長 島田氏にお話をお伺いしました。
金融業界も再編の動きなど大きな変革の時期を迎えている中で、地銀として地域密着型の新しいサービスを、他行に先駆けて展開している愛媛銀行の島田氏に、顧客サービスや今後の営業動向についてお話をお伺いしました。(※島田氏のプロフィールはこちら)
写真左_弊社代表吉田
「本日はお時間を頂戴しましてありがとうございます。まず初めに、銀行業界での営業活動(渉外活動)は最近の金融業界の動向も考えるとどのような流れであるとお考えですか?」
写真右_島田氏
「地方でも最近は競争が激しく厳しくなってきました。最近のトレンドですが、金融ビックバン以降のセキュレタイゼーション(不動産や債権などの資産の有価証券化)の流れがあって、大手都銀などは大企業のファイナンスのニーズが減ってきた影響で中小企業層へターゲットを広げてきています。もともとこのターゲット層は従来の地銀のフィールドであったため、現在は競争が激しくなってきています。」
吉田
「最近は外資系金融機関もかなり地方都市に進出していると聞きております。」
島田氏
「仰るとおりです。しかし外資系の場合は地方を担当するマンパワーがそれほど潤沢ではないので、いわゆる「超富裕層」のプライベートバンキングをメインターゲットとしています。法人ビジネスはかなり手間がかかるためまだ積極的には進出はされていないですが今後はより攻勢に出てくるでしょう。」
吉田
「法人分野ではメガバンク系が進出されていますが、まだリテールはないですね。」
島田氏
「現在、地銀は収益源をリテール分野で稼がざるを得なくなってきています。リテールは外資も証券も取り合いになっているため、地方は激戦状態であることは間違いありません。さらにリテールに関して言えば、「ゆうちょ」がでてきたので、今後はさらに一層激しさを増していくものと思います。」
吉田
「リテール分野に限ると、御行の戦略として他行との差別化はどのように考えられていますか?」
島田氏
「いろんな意味で差別化を考えていかねばならないと思いますが、やはり一番重要なのは、お客様に選ばれるための店舗戦略であり、お客様への応対であると考えています。他行が規制下の銀行意識が有る間に愛媛銀行としては一歩先んじて行くべきであり、お客様が店舗へお越しいただいた時に心地よい環境というのを提供していくことです。これが地元での愛媛銀行のブランドになると考えています。」
吉田
「最近は規制緩和で、店舗で販売できる商品も増えていると思いますが、その営業力についてはどのように考えられますか?」
島田氏
「もちろん専門性を高めていく必要は当然ありますが、お客様のニーズを把握して提案していくことが必要になります。リテール分野は、渉外がお客様を訪問するのではなく、お客様が必要に応じて店舗に来店するというお客様都合の「来店型」モデルです。私はよくいうのですが、銀行はいわゆる病院の会計カウンターと同じ状況です。お気づきかもしれないが、例えば銀行のロビーには「トイレ」がありません。もしトイレを借りる場合には銀行員用へご案内する形になり監視せざるを得ません。銀行は公共性が高いといいながらコンビニよりもサービスが悪い状況であり、金融業は本当の「サービス」業になっていません。そこで現在愛媛銀行の店舗戦略ではトイレを設置するようにしています。お客様アンケートの結果で明らかになった窓口業務の煩雑さも解消しようとしています。銀行員がお客様の代わりに書類を書いて窓口に持っていき銀行員が窓口の手続きを代行するようなスタイルを開発したりもしています。これらは営業店の利便性を改善した一つの事例でしたが、お客様の目線にたってサービスを提供しようと改革をしています。」
吉田
「確かに現在店舗でいろいろなサービスをご提供されていますよね。店舗戦略でいうと他業種とのコラボレーションなども考えられていますか?」
島田氏
「今度新居浜市に大型の書店とコラボレーションして出店します(こちら)。他業種と共同で店舗を開発する件は、機会があったら出店したいとおもいます。また、VOCE(ボーチェ)では、キッズルームを設置して、お子様をあずけながら対応していますのでお子様と一緒に来店でも安心してお打ち合わせすることができます。さらにライフスタイルの変化に応じて土日も営業しています。昔は夫・妻別々でしたが、今は土日に夫婦で銀行に来店されるようにもなってきました。」
―愛媛銀行というブランドの構築についてー
吉田
「愛媛銀行のブランドの確立」をかかげていらっしゃいますが、そういった地道な施策がお客様へ来店を促し来てよかったというお客様ロイヤリティの追求につながるということですね。」
島田氏
「これも一つのブランドづくりということで地道に活動しています。雨の日傘の貸出を始めたり、カウンターに女性のバックをおけるスペースを設置したりしているのですが、そういった愛媛銀行ならではの「あったらいいな」というサービスを開発しています。」
吉田
「外資や都市銀などとはちょっと発想が違いますね。」
島田氏
「外資やメガバンクは富裕層に優越感を持たせる専用ルームを設置したり、ゆうちょ銀行は中産階級が相談しやすいところ、というような戦略をとっていたりします、愛媛銀行が考える差別化は、金融サービスとしての「基本的な顧客対応」です。例えば、リッツカールトンやサウスウェスト航空のように、「顧客満足」ではなく「顧客の期待を超える感動」を与えるようなサービスを提供していくことであると考えています。これを狙って中期計画では『地域No.1の金融サービスの提供』 をするために<お客様に最初に相談される銀行> という愛媛銀行ブランドの確立を目指して活動しています。松山市の行政はワンストップサービスで複数の窓口に行かなくて済むのですが、これはいわゆる「お役所仕事」という私たちの想像よりはるかに上回る「期待」を提供しています。愛媛銀行でも地域No1を目指して期待を上回るサービスを提供したいと思っています。銀行らしくないサービスがあって嬉しい、といわれると私たちも嬉しいです。」
吉田
「地銀としてよくメディアが地域密着型を報道していたりしますがその点についてはどのようにお考えですか。」
島田氏
「ですから、最近ゆうちょ銀行も宣伝していますが、メディアからの取材でよくいわれるのが、ゆうちょ銀行への対策として土日も開店しているのか?と聞かれます。しかし、土日オープンについてはそのサービス自体の発想が違います。お客様のライフスタイルの変化に銀行も対応していかなければなりません。そもそも銀行が土日休みというのは誰が決めたのでしょうか?愛媛銀行はお客様の目線にたち、お客様の期待を上回るにはどうしたらいいのか、を考えながらサービス業として活動しています。顧客満足についてですが、金融サービスなんだからできて当然です。ブランドとして構築するには顧客の期待値を超えないと難しいです。そういう考え方を愛媛銀行のDNAに変えていきたいと思っています。」
吉田
「様々なサービスを開発して提供していることからみて、リテール分野は法人と違って肌で直接反応を感じることができるのがいいですね。」
島田氏
「やはり渉外という法人営業は現在もフェイス2フェイスのスタイルだし、個人の能力に依存しています。まずリテール分野は店舗戦略を中心とした仕掛けを考えました。法人の営業スタイルは未だに非常に生産性が悪いのでこれを変えないといけないと思います。例えば競合をリプレースするのにどうするか?ということを考えると、競合が週2回訪問しているならその倍の週4回訪問することしか考えられない。自分たちより大きな競合を相手だと営業リソースが違うのだからそのようなことできるわけがありません。渉外部門も営業活動の効率化を考えないといけない時期にきているのではと思います。」
―今後の金融業界について―
吉田
「最後に今後の金融業界の営業の動向について教えて頂けますか。」
島田氏
「金融業界に限らず、昨今は時間外労働の規制もありますし、中期計画でも宣言しているように会社のガバナンスを利かせるためにコンプライアンス(法令遵守)は経営の基本ですから当然です。そこで昨今話題の内部統制がいよいよ本格的に導入していくとなると、昔ながらの営業スタイルは通用していかなくなります。こういった営業環境の規制が今後はより厳しくなってきますから、渉外の生産性を向上させて効率化を実現していかないと法人営業は市場で勝つことはできなくなります。もちろんリテール分野の営業スタイルやそのあり方は別物であってもよいとおもいます。しかし、この高コスト体質からの脱却は必要なので、現在その解消と新たなチャレンジについて様々な仕掛けも考えているところです。」
吉田
「本日は長時間にわたり貴重なお話を頂きましてありがとうございました。」
島田 雄二郎(しまだ ゆうじろう)氏
株式会社愛媛銀行 お客様サービス部 部長
昭和50年 安田火災海上保険株式会社(後に株式会社損害保険ジャパン)入社
平成10年 同 東静岡支店長 就任
平成12年 同 愛媛支店長 就任
平成16年 同 取締役常務執行役員 就任
平成18年 同 退任
平成18年 株式会社愛媛銀行入行、頭取付部長 就任
平成19年 同 お客様サービス部長 就任(現任)